監修者:谷澤 佳彦(税理士)
請求書を発行する際、印鑑はどこに押せばよいのか、またどんな印鑑を使えばよいか不安をお持ちの方もいるでしょう。一般的な商取引では、ほとんどのケースで請求書に印鑑が押されるため、基本的なルールをきちんと押さえておくと安心です。
この記事では、請求書に必要となる印鑑の種類や押印時の注意点、電子印鑑の法的効力などについてご紹介します。
請求書は、サービスの提供者が、商品やサービスの購入代金の支払いを購入者に求めるために発行する帳票です。そして、ほとんどのケースで請求書に印鑑が押されています。
会社勤めをしていると何かと目にすることの多い請求書ですが、いざ自分が請求書を取引先に送ることになった時、「請求書には印鑑が必要なのか?」と疑問を抱いたり、「請求書に印鑑を押し忘れた!」と慌てたご経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法律上、請求書に印鑑を押さなければならない決まりはありません。そのため、押印されていない請求書も、正式な書類として扱うことができます。
また、そもそも 法律上は請求書を発行する義務もなく、双方の合意があれば口頭での請求も可能です。しかし、口頭で請求する場合、請求金額に対する内訳が不透明になりますし、請求された側が振込を忘れてしまう可能性もあるでしょう。そういったリスクやトラブルを防ぐために、ビジネス上では請求書の書面による送付が当たり前になっています。
法律上、請求書に押印の義務はないとご紹介しましたが、現状では請求書に印鑑を押すのが一般的で、私たちが日頃目にする請求書の多くにも印鑑が押されています。
請求書に印鑑(多くの場合は会社名が刻印された角印)を押すと、会社が請求書を発行したという証明になるため、請求書の信頼度が増すことになります。また、印鑑が押された請求書を偽造した場合、印鑑が押されていないものを改ざんするよりも重い罪に問われることから、トラブルを避けることや請求書の改ざんリスクの防止にも繋がります。
上記のような理由から、ビジネス上では請求書への押印が慣習化されているため、もし押印のない請求書を発行する場合は、取引先へ事前確認を取るなど配慮が求められるでしょう。
印鑑は様々な用途で使い分けされていますが、請求書には認印である「角印」を用いるケースが一般的です。以下で印鑑の種類と合わせて詳しく見ていきましょう。
実印とは、法務局や役所に登録申請し、受理された印鑑を指します。
法人の場合、実印には会社名と代表者の印が刻印された丸い形の丸印を登録するのが主流です。法人の実印は原則1社につき1本とされており、会社の意思決定を示すために必要となる印鑑なので、その重要度の高さから「代表者印」と呼ばれることもあります。法人実印は、「①代表者の印鑑証明書」「②代表者の個人の実印」「③法人の実印として登録する印鑑」の3点を持参し、法務局で登録することで初めてその効果を得ることができます。
実印は、株券の発行や不動産の売買、重要な契約を結ぶ際に活用される印鑑です。請求書に実印を用いるケースもありますが、請求書のように発行の頻度が高い書類は持ち出しが頻繁になることから、実態としては適切とはいえないでしょう。
銀行印とは、銀行口座の手続きに使用する印鑑です。実印と同様、会社名と代表者の印が刻印されています。実印を銀行印として用いるケースもありますが、持ち出しが頻繁で管理が煩雑になることや、摩耗・紛失のリスクから銀行印用の印鑑を作ることが多いでしょう。また、一般的には実印よりも小さめに作り、実印と見分けがつくように、印鑑の素材を変えるのが一般的です。
銀行印は、現金引出しや振込等の際に必要になるものですから、実印同様にきちんと保管する必要があります。そのため、請求書などに用いる印鑑としては適切とはいえないでしょう。
認印とは、印鑑登録していない印鑑全般のことを指します。宅配物や書留の受け取りや、市区町村役所で提出する書類などに使われる印鑑です。
法人の認印は、丸型の印鑑が主流の実印と区別をつけるため、正方形の印鑑に社名が刻印された「角印」を用いる企業が多く見られます。届け出は不要で、一般的に「代表者の印」の文字は含まれず、会社名のみとなります。請求書や領収書など、取引のために発行する書類に「確認」「承認」の証として押印する印鑑として適しています。
シャチハタ印とは、本体にインクが入っており、朱肉を必要としない印鑑です。シャチハタ印の多くはゴム印であるため、印影は力加減で容易に変化してしまいます。そういった点から実印として取り扱うことは難しく、宅配便の受け取りや簡単なサインが必要な際に活用される印鑑です。また、書類によってはシャチハタ印を認めないものもありますので、使い方には注意が必要です。
個人事業主・フリーランスの場合、個人の実印が法人の実印の意味を持ちます。そのため、屋号での実印は必要ありません。また、認印である角印も法律上では不要です。しかし、屋号を刻印した角印を押された請求書の方が、印鑑が押されていない請求書よりも印象が良いため、個人事業主・フリーランスでも認印である角印を用意する傾向があります。
実印は個人のものを1つ準備すれば十分ですが、認印(角印)は業務用と個人で区別できるように、2つ準備するのがおすすめです。
請求書への印鑑の押印は法律上定められていないため、押印位置についても特に規定はありません。しかし、ビジネスマナーとして、以下の点に配慮して印鑑を押印しましょう。
① 押印位置は会社名の右側
押印位置は、会社名の右側です。捺印欄がある場合には、捺印欄に押します。
② 会社名や住所に被せて押印
押印する際には、文字に被せるように押印しましょう。印鑑を会社名や住所などに被せて押印することで、請求書が改ざんされていない書類であるという証明になります。
押印時には次の4つのポイントに注意しましょう。
① マナーとしての押印位置に注意
印鑑の位置は、上記で説明した一般的な押印位置に押すことが大切です。
② 印影がわかるようにはっきり押印
印鑑は請求書の信頼度を高める証となるため、印影がはっきりと鮮明にわかるように押しましょう。
③ 訂正印による修正はしない
押印を間違えてしまった場合には、二重線を引き訂正印を押して修正するのでなく、請求書を再発行してあらためて押印します。
④ 曲がったりしないように平行な位置を維持して押印
印影が曲がったりしないことも大切です。きちんと平行な位置を維持して押印することで、印象も良くなります。
ビジネスを取り巻く環境も変化を遂げてきました。近年では書類をWEB上で発行し、その書類に直接「電子印鑑」を押す手法が広く活用されています。そもそも請求書への押印は法律上で規定されているわけではないため、電子印鑑を使用しても何も問題はありません。
電子印鑑には「印影をデータ化した印鑑」と、「印影をデータ化し印鑑の持ち主、作成者、タイムスタンプ情報が組み込まれている印鑑」の2種類が存在します。
▼ 印影をデータ化した印鑑
紙に押印した印影をスキャンし、画像データ化した印鑑です。こちらについては、画像と同等なので法的効力はありませんが、「確認」「承認」という意味で、認印として使用する分には十分です。請求書や領収書など、法人が取引のために発行する書類への押印に適しています。
▼ 印影をデータ化し印鑑の持ち主、作成者、タイムスタンプ情報が組み込まれている印鑑
印影を画像データ化した上で、印鑑の持ち主や作成者の情報、押印した時間に確かにその書類が存在することを証明するタイムスタンプ情報が組み込まれた印鑑です。こちらはセキュリティも強化されているため、持ち主の情報を正しく証明する電子証明書に登録することで、実印として使用することができます。
電子印鑑の作成方法は次の3つがあります。
① 印影をスキャンして作成する
印鑑を白紙に押印してスマホなどで撮影し、画像としてパソコンに取り込む方法です。 取り込んだ画像を請求書データに挿入し、余白やサイズを編集後、背景を透過させて保存します。
② WordやExcelで作成する
WordやExcelの挿入タブで図を選択し、円形や四角など、希望の形に合った図形を選んで作成する方法です。挿入した図の中心に会社名や名字を入力し、サイズや文字の太さなどを編集して保存します。
③ 無料/有料ソフト、ツールで作成する
無料や有料のソフトやツール、アプリで作成する方法です。テンプレートで印鑑の形を選び、文字を入力して作成する流れが一般的です。ソフト、ツールによっては、セキュリティが高いものや電子契約に対応したものもあります。
PDF(電子請求書)も、紙の請求書の場合と同様、法律上押印の義務はありません。しかし、PDF(電子請求書)でも印鑑や電子印鑑が押されていれば、会社から発行された証明となるのは紙の場合と同様でしょう。また、偽造防止目的のためにも印鑑や電子請求書が利用されています。
従来、請求書を電子化するには一度印刷し、印鑑を押した請求書をスキャンし、PDFに変換する作業が必要でした。しかし、電子印鑑を使用すれば、押印が不要になるため、請求書を印刷することなく、PDF化(電子化)できます。そのため印刷、押印、スキャンの手間が削減され業務の効率向上へと繋がります。
さらに、郵送代や印刷コストの削減といったメリットが利益拡大へと繋がる糸口になります。こうした背景から、請求書をはじめとする帳票の電子化は更に進んでいくでしょう。
電子請求書発行システム「楽楽明細」は、請求書や見積書、領収書、納品書などビジネスで必要とされるあらゆる帳票を電子発行できるクラウド型のシステムです。帳票データをアップロードするだけの簡単操作帳票を発行でき、手間やコストを大幅削減します。
資料請求の他に無料トライアルも実施しているため、電子印鑑を利用した電子請求書の発行をご体験いただくことも可能です。電子印鑑の利用や、請求書の電子化をご検討の方はぜひお気軽にお問い合わせください。
今回は、請求書の印鑑についてその必要性や印鑑の種類、押印時の注意点、電子印鑑の法的効力や作り方などをご紹介しました。経理業務もデジタル化・脱ハンコの動きが推進される中で、電子印鑑が用いられるケースが増えています。業務効率化を図るためにも、この機会に電子印鑑の利用や請求書の電子化を検討してみてはいかがでしょうか?
1993年に税理士資格を取得し、「谷澤佳彦税理士事務所」を開設。近年は相続・事業承継に対する税務相談を数多く対応する。
司法書士や不動産鑑定士など他の専門家とタッグを組み、組織として企業の繁栄・事業承継をサポートすることも得意とする。
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