監修者:内山 智絵(税理士)
経理業務を担当される中で、請求書作成時に宛名の記載方法に迷った経験がある方も多いのではないでしょうか? 的確に記載しなければ、社内のさまざまな場所を経由してしまい、担当者にスムーズに届かなかったり、最悪の場合受け取ってもらえない可能性もあります。
この記事では、請求書がスムーズに取引先の経理担当者の手に届く「正しい宛名の書き方」について解説します。
請求書の宛名を正しく書くことは、請求書を取引先の適切な部門に確実に届けるために重要です。宛名が正確でないと、取引先の社内の中で担当者に届くまでに時間がかかったり、最悪の場合「届かない」ということもあります。請求書の宛名を正しく書くことで、取引先の購買担当者、あるいは経理担当者までスムーズに届きます。担当者に間違いなく届けば、余計な手間もかけずに済み、取引先での入金もスムーズに処理されます。
請求書に正しい宛名が必要である理由を知るために、まずは請求書受領後の処理の流れから解説します。
請求書の一般的な流れは次の通りです。
まずは必ず担当者が請求書の内容に間違いがないかチェックを行います。企業によっては経理担当者でなく、購買担当者が確認する場合もあります。その後、金額によっては決裁が行われます。経理部門内の決裁だけで処理を進める場合もあれば、経営者の決裁を受ける場合もあるでしょう。そして、最終的には請求書に基づき代金の支払いを実施します。この流れは電子帳簿保存法の影響をうけず、紙の請求書でも電子請求書でも同じです。
請求書の保存期間は、法人と個人の場合で異なります。法人の場合は原則7年間で、欠損金の繰越控除を適用していれば10年間の保存が義務付けられています。一方、個人事業の場合は原則5年です。紙でも電子データでも、現状の保存時間は同じとなります。
請求書の宛名の書き方にはマナーがあります。「御中」と「様」の使い分けや、名前はフルネームで記載するなど、企業人として当たり前と言えるマナーです。まずは多くの方が迷う部分である「御中」と「様」の正しい使い分けから解説します。
「御中」と「様」の区別の仕方、使用時の注意点は以下の通りです。
請求先の担当者が分かっているときは、個人名で「様」を使用しましょう。「様」は役職が分からない場合、あるいは目上の人でも使用できるため、汎用性が高くさまざまなケースで使われます。
ただし、取引先(会社名)に使用するのは「御中」です。一般的に、個人名まで記載する場合には「〇〇株式会社 △△様」という書き方になります。そのほかに、次のようなことにも気を付けておくと万全です。
例えば「株式会社」を「(株)」と記載したり、企業名を通称で記載したりすることは失礼にあたります。必ず正式名称で記載しましょう。
「株式会社 〇〇御中」や「〇〇株式会社」と記載します。
名刺などで担当者のフルネームが分かる場合は、必ずフルネームで記載します。名前の前には、部署名や役職名も必ず書くようにしましょう。例えば、同じ名字の人が複数人いる部門に請求書を送る場合、名字だけの記載だと、届いてほしいところにスムーズに届かない可能性があります。自分宛の請求書であることを認識してもらい、確実に受け取ってもらえるよう、事前にフルネームを確認し、フルネームで書くようにしましょう。
「〇〇株式会社 経理部 鈴木 ○○様」と記載します。
請求書には必ず記載しなくてはならない項目があります。項目内容は紙でも電子でも同じです。ここでは、請求書に欠かせない記載項目と、封筒に記載することが望ましい内容を解説します。
記載項目には、税法の観点から見ても外せないものがあります。特に、消費税法では仕入税額控除を受けるために、請求書の必要項目が細かく規定されているのです。消費税法の規定を満たす請求書の項目は以下の通りとなります。
書類作成者の記載がなければ、支払う側もどの取引先なのか確認ができないため、支払いができません。取引年月日や取引内容、取引金額は正しい会計帳簿を作成するために必須です。同様に、書類を受け取る側の名称も必要です。なお、前章でもご説明の通り、担当者名まで記載すれば、受取側に余計な手間をかけずに請求内容の確認をスムーズに進めてもらうことができます。
そのほかにも、確実に代金を入金してもらうためには、以下の項目の記載があるのが望ましいでしょう。
支払期限は、確実に代金を回収するためのひとつの目安です。その期日までに回収ができない場合には、再度連絡を入れるなど、次の行動に移る目安になります。
振込みの際には、銀行番号や支店番号、口座番号が必要です。そのため、事前に請求書に記載することで取引先の経理担当者の手間を省き、振込ミスも防止できます。
さらに、送付状も付けた方が丁寧です。「何を送ったのか」がわかり、記載されている内容物が不足していた場合は連絡がもらえます。「取引先の手間を削減する=自社が確実に金銭を回収できる」と考えると、おろそかにできない内容です。
必須事項ではありませんが、封筒には「請求書在中」と書いた方が、確実に担当部門へ仕分けされます。また、ほかの郵便物との区別がつきやすく、間違い防止につながるでしょう。一般的には手書きでなく「請求書在中」のスタンプを押すことが多く、スタンプを準備しておけば時間短縮になります。
ここまで請求書の宛先に関するマナーを解説してきましたが、宛名書きもマナーに注意したり、正しい宛先を確認したりと手間がかかります。しかし、電子請求書であればそれらの手間を削減しながらよりスムーズな取引を実現できます。
電子請求書とは、インターネット上やメールでやり取りできる、請求書をデータ化したものです。紙の場合と異なり、印刷・封入・発送などの作業が不要で、紙代や郵送費を削減できます。
電子請求書のメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「請求書の電子化とは?注目されている理由は?メリット・デメリットと導入のポイントを解説」
システムを利用して電子請求書を発行すれば、システム側の設定のみで、迷いがちな宛名も簡単に記載できます。さらに、システムによっては請求書を一括で自動発行できるため、発行業務を大幅に効率化し、手間を削減できます。
また、誤送信など人的ミスを減らすことができ、すぐ相手に届けられることもメリットです。スムーズな取引につながり、結果として自社の業務改善を可能にする方法の1つです。
「楽楽明細」は請求データをアップロードするだけで、請求書を簡単に電子発行できるクラウド型のシステムです。請求書だけでなく支払明細や領収書など、あらゆる帳票を電子発行できます。
電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応したシステムとなっているため、請求書発行業務の効率化はもちろん、法対応にも役立つでしょう。
請求書の宛名を正しく書くことで、受け取ってほしい担当者へ確実に請求書を届けることができます。ただし、発行数量が多い請求書では作業が煩雑になり、間違いが起こる可能性も否定できません。しかし電子請求書であれば間違いのリスクや手間を削減して、取引先に請求書を届けることができます。請求書発行業務の効率化の一環として、電子請求書システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。
公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した。
現在は、個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。
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