監修者:川口 拓哉(税理士)
従来、帳票の作成は紙へ手書きするのが通常でした。しかし最近では、帳票作成ツール導入によって電子データでの帳票作成・保管を実現するケースが増えています。ただし、帳票作成ツールの導入にはコストかかるため、導入のメリットとデメリットを正しく理解し、自社の業務に合ったものを選ぶことが大切です。
本記事では、「帳票の作成方法が知りたい方」や「帳票作成ツールを導入して電子データで帳票を作成・保管したい方」、「帳票作成作業を効率化したい方」に向けて、帳票作成の方法や帳票作成ツール導入のメリットやデメリットについて詳しく解説します。
帳票の作成方法を知る前に、まずは「帳票」の基礎知識について簡単におさらいしましょう。ここで解説するのは、電子や紙を問わず必要な共通知識です。
帳票とは、帳簿の「帳」と伝票の「票」の両方に由来している会計用語です。「帳簿」は一定期間の取引を網羅的に記録するもので、代表例は総勘定元帳です。また、「伝票」はお金や商品、債権債務などの増減を記入する紙のことで、代表例は納品書や領収書です。帳簿と伝票のどちらにも共通しているのは、「取引の証拠を残す」という重大な役割があることです。
種類や帳票の扱いについては下記の記事で詳しく解説しています。
「帳票とは?請求書・納品書など、いまさら聞けない帳票の種類と役割を解説!」
帳票の作成方法は、大きく分けて「紙で作成する方法」「エクセルで作成する方法」「帳票作成ツールで作成する方法」の3つです。最近では電子帳簿保存法の影響もあり、ペーパーレス化の流れから帳票作成ツールを採用する企業が増加しています。しかし、前述した3つの方法には、それぞれメリットとデメリットがあるので十分な検討が必要です。ここでは種類別の特徴とメリット・デメリットについて解説します。
紙で作成するとは、つまり手書きするということです。パソコンが使用できない人でも、記載方法さえ理解していれば誰でも作成できるため、業務が特定の人に偏ることもありません。紙で作成するメリットとデメリットには、次のようなものが挙げられます。
紙で作成する場合は、誰でも簡単に作成できるというメリットがある反面、人によって文字が読みにくい可能性があるというデメリットもあります。経理を長く担当されている方であれば、例えば「これは8なのか3なのか」など判別しにくい領収書を見たことがあるかもしれません。判別しにくい文字を書かれると経理担当者が帳票の作成者に正しい数字を確認する手間がかかりますし、誤った数字を会計システムに入力してしまう可能性も否定できません。誤って入力すれば、そのまま他の帳票に反映されてしまいます。
エクセルで作成する方法では、帳票に記入する項目を集約したエクセルシートを作成して運用します。エクセルですから、一度作成したひな型を保存すると、同じフォームで記載可能です。そのため、たとえ入力者が変わっても、字が読みにくかったり体裁が違ったりすることがありません。エクセルでの作成におけるメリットとデメリットは、次のような内容です。
エクセルは、一般的に広く利用されている表計算ソフトです。そのため、自社に必要な項目を追加したり、レイアウトを調整したりできます。
しかし、中にはパソコンが苦手、あるいは表計算が苦手という人もいるでしょう。そのため、特定の人に業務が集中し、属人化しやすいという傾向は否定できません。そのため、効率化という観点から見れば、手作業よりは効率的という程度です。また、効率化を考えてエクセルで管理するには、マクロやVBAなど高度な知識が求められます。
帳票作成ツールは作成から管理、出力や保管まで一括してでき、操作も簡単なことが特徴です。ツールによってはデータを読み込めば自動で帳票を作成でき、送付まで完了できるものもあります。具体的に挙げられるメリットとデメリットは、以下の通りです。
帳票作成ツールで作成する場合、紙やエクセルで作成する方法と違って、手作業が減り、業務を効率化できるというメリットがあります。ただし、ツールによっては既存のフォーマットを再現できず、変更しなければならない場合もあるため、事前に確認が必要です。
帳票作成ツールは数多く販売されているため、どれを選ぶべきか悩む方は多いでしょう。そんなときポイントとなるのが、「出力方法」「データ取り込み方法」「料金」「セキュリティ性」の4つです。ここで、それぞれ詳しく見ていきましょう。
PDFやエクセルに出力できるか、もしくは出力方法を選択できるかどうかが重要です。例えばPDFの請求書や領収書なら、そのままメールに添付して取引先に送ることが出来ます。また、エクセルならデータを加工したり、異なるシステムへ読み込んだりすることが可能です。帳票がエクセルで加工できれば、社内の業績報告に活用でき、経理実務だけではなく経営にも役立つでしょう。
異なるシステムから出力したデータや、エクセルで作成した表などを取り込めるインポート機能があると便利です。一括で取り込んだデータをもとに、帳票を一気に作成することが出来るので、「日付」や「金額」などのデータを直接帳票作成ツールに入力する必要もなくなります。
採用するツールにより、料金はさまざまです。自社に合った料金設定なのかシミュレーションしたり、見積もりを取ったりして比較しましょう。ツールによって機能は多様ですが、それぞれ要不要は企業によって異なります。帳票作成ツールには一般的に多くの企業で使用される機能がすべて入っているため、必要な機能が不足している場合より、必要ない機能が付いていることが多いのです。使わない機能を省けるかどうか、それによって料金に変更があるのかどうか、事前に確認しておきましょう。そのほか、帳票作成ツールの導入費用(イニシャルコスト)及び月額費用(ランニングコスト)の合計額と、帳票作成ツールの導入によって削減できる人件費を比較し、費用対効果を確認することも大切です。
セキュリティを高める最大の目的は、「外部への情報漏洩・外部からの改ざん」を防ぐことです。こうした事態が起きた場合、損害賠償など自社にとって大きな損失に繋がるだけでなく、外部に対しても被害が及びかねません。また、周囲からの信頼を著しく低下させることにもなります。そのため、外部からの不正アクセスやウイルス感染等のリスクに対して、どれだけ強固なセキュリティが設けられているのかは非常に重要です。
そして、社内向けには閲覧・編集の権限機能や、過去履歴の確認機能があるのかも重要です。閲覧や編集の権限は、利用者全員に付与しない方が良いこともあります。例えば、統一のルールを決定して運用していく場合、ルールの変更に応じて実際にシステムが触れる担当者を1人にしておくなど、状況に合わせた設計が大切です。また、業務にあまり関与しない人には閲覧できる部分に制限を設けておくことも、情報漏洩の観点から必要といえるでしょう。
このほか、データの訂正や削除の履歴が記録される機能があると、「データをいつ誰が訂正したのか」「どのような内容を変更したのか」といった事項を確認することができ、帳票の確からしさの向上やセキュリティの確保につながります。なお、このような機能がある場合は、電子帳簿保存法における電子取引の保存要件である「真実性の確保」を満たすことができるようになります(「真実性の確保」は、タイムスタンプの付与やデータの訂正・削除を防止するための事務処理規定の整備によっても満たすことが可能です)。
帳票作成だけではなく、その後の「送付」まで電子化すれば、さらに業務効率化が図れます。請求書や領収書などの帳票を紙で取引先に送るためには、「印刷」「封入」「発送」という一連の作業が発生します。取引先の件数が多ければ多いほど、その分だけ手間も時間もかかります。システムを利用すれば、その手間を大幅に減らすことが出来ます。システムの中には、データ作成からメール送信まで一括で行えたり、紙での発送もシステムを利用して行えたりするものがあります。これらの機能を活用すれば、大幅な業務効率の改善を期待できるでしょう。
システムを選ぶ際に重要なのは、システムが「改正電子帳簿保存法」の要件を満たしているかどうかです。
改正電子帳簿保存法の要件を満たすシステムを選ぶことが重要である理由は、システムが要件に対応していれば、経理担当が帳票作成時にいちいち細かく確認しなくても、法令に準拠した運用ができるためです。一方、選択したシステムが改正電子帳簿保存法の要件を満たさない場合は、手間の削減を目的にした電子化を達成できても、帳票作成の度にチェックする手間がかかることにより、経理担当の負担は減らず、むしろシステムの導入によって増える可能性もあります。
「改正電子帳簿保存法」の要件を満たすシステムの中から、自社の状況に応じて必要な機能のあるシステムを導入してください。
「楽楽明細」は、帳票データをアップロードするだけで請求書や領収書、支払明細書など、あらゆる帳票の電子発行が可能です。
簡単な操作だけで、帳票の印刷と作成・封入・発送の手間やコストを大幅にカットできます。さらに、発行方法は「WEB」「メール」「郵送」「FAX」の中から選べるため、取引先の状況に柔軟に合わせながら電子化を進めることができます。
また、「楽楽明細」は電子帳簿保存法にも対応しており、加えて、導入から運用まで手厚いサポートが受けられます。操作方法で不明な点があればすぐに連絡できるため、業務が長時間にわたり中断することもありません。無料トライアルがあるので、まずはこれを活用して実際の操作を試し、自社に合ったシステムかどうか確認してみてください。
帳票の作成方法は、紙への手書きからエクセル、帳票作成システムの導入までさまざまです。ただし、どのような方法を採用しても、帳票が証拠として信憑性の高いものでなければなりません。それぞれメリットとデメリットがありますので、どの方法が自社に合っているか十分に検討しましょう。たとえば、手書きは誰でも必要な項目を理解できれば簡単に行えますが、効率的とは言えないでしょう。また、帳票作成システムは帳票の保管から管理まで一括化できますが、ランニングコストがかかります。
また、初めて帳票作成システムを導入する場合には、操作上で不明点が出てくるかもしれません。導入から本格運用まで手厚いフォローが受けられれば、スムーズにシステムを使いこなせるようになるはずです。ランニングコストと必要機能、フォロー体制にポイントを置いて、帳票作成ツールを比較検討してみてください。
税理士(名古屋税理士会)。2017年の税理士試験で官報合格。
法人及び個人の確定申告書作成、協会における相談対応、Webメディアでの記事執筆や監修などの経験を有する。川口拓哉税理士事務所代表。
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