著者:須栗 一浩(税理士)
領収書は紙に記載して発行するだけでなく、電子発行も可能です。この記事では、領収書発行業務の効率化や、印紙代の節約を考えている方に向けて、領収書を電子発行するためのポイントを紹介します。
紙の領収書を発行する場合、記載する金額が高額になると収入印紙の貼りつけが必要となります。収入印紙は、課税対象となる文書についての納税を証明するためのものです。
領収書も課税対象の文書に含まれており、領収済みの金額が5万円以上になると収入印紙の貼りつけが求められます。5万円以上、100万円未満の場合、必要な収入印紙は200円です。領収書に記載する金額が高くなればなるほど、必要な収入印紙の金額は高くなります。たとえば、領収書の金額が100万円以上になると400円の収入印紙、200万円以上になると600円の収入印紙が必要です。領収書の金額に対して必要な収入印紙の金額は細かく定められており、最大で20万円(領収書の金額が10億円を超える場合)まで設定されています。
↓印紙税一例
領収書に記載された受取金額 | 印紙代 |
---|---|
5万円未満 | 非課税(収入印紙不要) |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円以上200万円以下 | 400円 |
200万円以上300万円以下 | 600円 |
300万円以上500万円以下 | 1,000円 |
500万円以上1,000万円以下 | 2,000円 |
~中略~ | ~中略~ |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
受取金額の記載のないもの | 200円 |
参考:国税庁ホームページ
なお、領収書に記載する金額が5万円未満であれば非課税となるため、収入印紙は必要ありません。領収書に記載する金額が5万円未満の場合が非課税となったのは、平成26年4月1日以降です。平成26年3月31日以前に作成 された領収書は記載する金額が3万円未満の場合が非課税とされていました。そのため、以前であれば領収書に記載する金額が4万円の場合は収入印紙が必要でしたが、いまでは不要となっています。
ただし、領収書に記載する金額に関係なく、収入印紙が不要になる方法もあります。それは、領収書を紙で作成するのではなく、電子発行に切り替える方法です。法律上、印紙税の対象となるのは紙で作成した文書だけに限定されているため、電子文書として発行された領収書に収入印紙は必要ありません。領収書の発行方法を変えるだけで印紙代を節約できます。この変更に関する特別な申請や手続きをする必要はありません。もちろん、取引先に対する事前の説明は必要です。とはいえ、電子発行ならスピーディに領収書を受け取れるなど取引先にとってのメリットもあるので、受け入れてもらいやすいでしょう。
領収書を電子発行する場合、データ形式で作成した領収書を送付します。送付方法は複数あり、たとえばメールで送ったりインターネット上で取得できるようにしたりするのが一般的です。なお、FAXで領収書を送付する場合も電子発行に該当するため、収入印紙は不要です。
領収書の電子発行に対応しているクラウドサービスを活用すれば、従来の紙の領収書からスムーズに切り替えができますし、領収書の発行にかかる手間や時間も大幅に減らせます。経費としての印紙代を削減できるうえに業務の効率化にもなるので、すでに多くの企業が取り入れています。自社の状況を踏まえ、使いやすいクラウドサービス選んで導入することが大切です。
紙の領収書に印紙を貼らなければならないのは、印紙税法による定めがあるからです。印紙税法では、課税文書にかかる印紙税を納めるために印紙を貼り付け、消印をする必要があるとしています。印紙はコンビニや郵便局などで購入でき、購入をもって納税の代わりとなります。実際には、印紙を販売した業者がまとめて納税をおこなう仕組みです。購入した印紙を文書に貼り付けることで、納税の事実を証明できるようになっています。
領収書は「金銭又は有価証券の受取書」を示す第17号文書に該当する課税文書なので、印紙による納税が必要です。仮に、印紙が必要であるにもかかわらず貼りつけと消印を忘れて領収書を発行すると、過怠税が科されるので注意が必要です。過怠税は納めるべき印紙税の2倍に相当する金額と定められており、納めていない印紙税とあわせて徴収されます。つまり、この場合は通常の印紙税の3倍の金額を支払わなければならなくなります。
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