監修者:臼井 雄志(税理士)
「もう少し事業運営費用を削減したい」「どこで経費削減をすればいいのかわからない」という経営者やバックオフィス業務の従事者に向けて、誰でもできるコスト削減方法やアイデアを事例と共に解説します。コスト削減から企業価値向上につながる流れまで、ぜひ参考にしてください。
もともとコストとは英語で「原価」という意味を持ちますが、これには「利益を得るために必要な企業活動全ての費用」という意味が含まれています。つまりコスト削減とは、「利益を得るために必要な企業活動費用」を削減し、利益を増やすことを目的に行われるものです。企業の利益は基本的に以下の図式で考えられますが、この図式からもわかるように、コスト削減は利益の向上に直結するといえます。
一般的に「コストを10%削減することは、売上を40%拡大するのと同じくらいの効果がある」と言われます。例えば売上高2,000万円、経費1,600万円を使っている会社の営業利益は400万円となり、利益率20%です。コスト削減で利益確保を実現するなら、経費を10%(160万円)削減すれば利益は560万円になり、利益率は28%に上昇します。利益率を仮に20%として、売上拡大で560万円の利益を確保するには2,800万円の売上(売上40%拡大)が必要です。
事業の運営上コスト削減できた経費は純利益となることから、多くの企業が取り組んでいます。
次に企業にかかるコストの種類を見ていきましょう。今回は代表的な以下3つのコストについて解説します。
人件費は経費の中でも「固定費」に分類され、変動費とは異なり削減が難しいコストの1つです。人件費には、従業員に対して支払う給与や通勤費、残業代などの各種手当、賞与、交通費などに加え、人材確保のための採用費も含まれます。売り上げが下がったからといって、人件費を下げるというわけにはいきません。簡単に給与が下がれば、従業員の会社に対する信用度が下がってしまい、会社の信用に影響を及ぼしかねないでしょう。例えば採用コストの場合、内部コストと外部コストがあり、次のようなものが挙げられます。
なお、「就職白書2020」では、2019年度の新卒採用、及び中途採用の一人当たりの採用コストは新卒採用が93,6万円、中途採用は103,3万円と発表しています。また、「就職白書2022」では、2023年卒採用の見通しについて、活動費用は「増える」が「減る」を上回ったと発表しています。
これらの結果からも、採用コストがいかに高いか、また、削減しにくいコストであるかがわかるでしょう。
参考:リクルート「就職白書2020」
参考:リクルート「就職白書2022」
オフィスコストとはオフィスを使用するうえで必要となるコストで、主に次のようなものが該当します。
固定費である賃料や光熱費は、一度削減できれば中長期的にその効果を得ることができます。しかし、現在日本の置かれている環境を考えると、すぐに大きな結果は得られにくいでしょう。
そのほか、ビジネス上ではさまざまな経費が発生します。事業内容等にもよりますが、事務用品などの消耗品以外に、交際費や広告宣伝費も経費に挙がります。交際費は取引先との交渉や付き合いのために支払われる費用で、ゴルフコンペの費用や新年会や忘年会費があてはまります。また、広告宣伝費は、会社の商品やサービスを不特定多数の人に紹介する目的で使用される費用で、広告出稿費やチラシ作成費などを指します。
コスト削減が成功すれば、次のようなメリットが得られます。
企業の利益が増加すれば、増加分を従業員へ賞与として利益配分できます。従業員の満足度は上がり、業務に取り組むモチベーションアップにつながるでしょう。また、コスト削減は業務効率化にも貢献します。
付加価値の低い単純作業などを積極的に自動化して手間を削減すれば、従業員は効率よく業務を行えるため、生産性の向上も望めるでしょう。もちろん、余分な作業が減少すれば残業代も削減できるため、固定費といわれる人件費のコスト削減が実現します。
増加した利益は従業員へ還元できるほか、自社の事業拡大へ利用することも可能です。新規プロジェクトの立ち上げ費用や技術開発費など、企業価値の向上につながる施策が実施できます。
コスト削減方法を検討するためには「現在何にどのくらいコストがかかっているか」を把握し、「不要なものやプランの見直しが出来るものはないか」「外部に依頼することで安く収まらないか」「システムの導入で効率化できないか」といった視点で整理をする必要があります。削減できそうなポイントが見つかれば、あとはアイデアを出すだけです。以下で具体的なコスト削減の方法をご紹介します。
現代の採用方法は多様化が進んでおり、リファラル採用やダイレクトリクルーティングという新しい手法を採用することにより、コストを削減する方法があります。
例えば、従来の方法が求人サイトで応募があった就活生全員を対象としていた場合、人数にあった会場やその会場費用を確保しなければなりません。しかし、ダイレクトリクルーティングであれば、企業が声をかけた就活生のみを対象に説明会を開催すれば良いので、大きな会場が不要になり、コスト削減につなげることができます。
適切な外部委託は、従業員を1人雇うよりも安く済むことが多いでしょう。また、外部への委託は人件費を抑えるだけでなく、内部の人材がコア業務に従事できるというメリットも生むため、業務改善にもつながります。
総合病院であるA病院では、入院患者に提供する食事をより良いものにし、人件費や食材費を考慮するため院内調理から給食業者への外部委託を決定。その結果、年間1.4億円ものコストを削減することに成功しました。
テレワークを実施することで、電気代の大幅カットが実現できます。オフィスは部屋が多いため、人数が多ければ多いほど使用する部屋数も増え、その分電気代が上がります。また、オフィスそのものを縮小すれば、賃借料の削減効果も見込めます。
電話代やインターネット代をはじめとする通信料は、法人向けに設定されているプランがあり、割引キャンペーンを適用できる場合があります。そうした割引を活用すれば、無理なくコスト削減の実現が可能です。
営業部署で高速料金や携帯電話の通話料がコスト課題となっていた企業Hでは、契約先を法人割引のある企業に切り替えたことで、大幅にコストを削減しました。
電力自由化により、電力会社の選択が可能になりました。もっとも自社に合ったプランを選択すれば、コスト削減が望めます。例えば時間帯に応じて安くなるプランや、通信費の契約と一緒にすることで安くなるものがあります。
サービスの質を落とさずコスト削減できるものはないかと模索していたある旅館Dでは、電力自由化のニュースを知り、電気会社を乗り換えた結果、電気代を年間12.6%削減することに成功しました。
照明器具をLEDに変えるだけで、電気代が削減できます。同様に、古いエアコンなどを使用している場合、最新機種に変えるだけで節電効果が得られることも珍しくありません。
人がいない場所のエアコンは消す、来客がある場合は5分前までにエアコンを入れるなど、温度管理に気を遣うことでコスト削減につながるケースがあります。
OA機器であるコピー機などのリース・レンタル代は月額で定められ、印刷代金はカウンター料金としてカウントされた月間印刷枚数によって異なります。契約から年月が経っている場合には、稼働量も変動するため契約の見直しがおすすめです。また、10年以上の古いコピー機から新しいコピー機に替えるだけで80%もの消費電力を削減できると言われています。
書類を印刷するだけでもコストがかかります。昨今書類を電子化する企業も増えていますが、書類を電子化し、ペーパーレス化できればインク代やカウンター料、コピー用紙代の削減につながります。
スキャナ生産を行う企業Eでは実際に販売しているスキャナを活用し、徹底したペーパーレス化を実現。その結果、92%もの大幅なコスト削減に成功しました。
外部メディア掲載料や媒体への広告掲載料などを見直しましょう。広告が費用対効果にあっているのか、担当が常にコスト意識をもって施策に取り組み、成果の悪い広告を見直すことで、コスト削減につなげることができます。
広告費に莫大な費用を費やしていた企業Fでは、自社内で広告の企画や立案を実施。代理店を通さずに制作会社へ直接依頼をすることで、広告費のコスト削減に成功しました。
ここからはコスト削減の手順とポイントを詳しく解説します。コスト削減を進める際にぜひ参考にしてみてください。
まずは「現状を知ること」が重要です。「何にもっとも費用が掛かっているのか」「費用を削減できない部分はどこなのか」を把握することで、業務効率化を見据えたコスト削減ができます。
なお、コストは、冒頭でも取り上げたように「利益を得るために必要な企業活動全ての費用」です。そのため、コスト削減に取り組む場合には、必ず全てのコストを把握するようにしましょう。
コストが把握できたら、「現状不要となっているもの」「年に数回しか利用しないもの」など、削減できる可能性のあるコストを洗い出します。一度も見直したことがない場合は、すでに利用していないのに、支払いだけが発生しているということも珍しくありません。無駄なコストを削減するだけでなく、別の方法に置き換えることで削減できるコストなど、まずは徹底的に改善可能性を探りましょう。
手順2で洗い出したコストを元に、どれくらい削減すれば良いのかという、具体的な目標を設定します。ここでのポイントは、継続できる無理のない目標を立てることです。無理な目標を立てた結果、社員のモチベーションを下げてしまうことにならないように注意しましょう。
目標設定が完了したら、次は目標を達成するための具体的な削減方法を検討します。削減方法検討のポイントは、削減した場合に事故や負担が発生する可能性が無いかを推測・確認した上で選択することです。例えば、以下のような事象はよくある誤ったコスト削減方法なので、気を付けなければなりません。
例:人件費削減を目的とするあまり、社内の誰よりも営業力がある人材との契約を解消してしまい、大きく売上が減少。
手順4で選択した削減方法を社内に周知します。コストの削減は、経理担当者一人の力では実現が難しく、様々な部門や社員との協力が不可欠です。ただ「コストを削減してください」と周知を行っても、あまり効果はないでしょう。周知・徹底のためには「冷房設定温度は28度に厳守」「オフィスの照明を50%削減」など、具体的なルールを設けた上でフローをマニュアル化しておくことが重要です。
コスト削減を実行した際には、PDCAを行いましょう。PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとったもので、計画の効率化を測るための方法の1つです。ただプランを計画・実行しただけでは、改善点を見つけることはできません。また、ミスをした場合に、原因を有耶無耶にしたままでは再び同様のミスをしてしまいます。そのため、成功でも失敗でも必ず評価を行い、改善に繋げます。そして、チェックの結果改善点があれば実行プランを見直します。
最後に、コスト削減の方法の1つである「ペーパーレス化」の実現に役立つ「楽楽明細」を紹介します。
電子請求書発行システム「楽楽明細」は請求書や領収書、支払明細書などのあらゆる帳票を電子発行できるクラウド型のシステムです。帳票を電子化することで、紙代や封筒代、郵送費などの経費を大幅削減することができます。
※月の発行件数500件の場合の年間の導入効果
またコスト削減だけでなく、印刷・封入・発送の作業がゼロになるため、発行業務の手間も削減できることが可能です。
ここで、「楽楽明細」の導入によりコスト削減を成功させた事例をご紹介します。
株式会社パソナテック様では「楽楽明細」の導入により、郵送で送っていた請求書をWEB発行に切り替えたことで、毎月74時間の作業時間と年間280万円のコスト削減に成功しました。
株式会社パソナテック様の導入事例はこちら>>>
「楽楽明細」は建設業や製造業、卸売業、小売業など、あらゆる業種でコストや手間の削減を実現しています。コスト削減をお考えの方は、ぜひ一度ご検討ください。
企業にかかるコストは様々な方法でコスト削減が可能です。また、コスト削減を実現できれば、企業の利益増加はもちろん、業務効率化や従業員のモチベーションアップなどのメリットも享受することができます。
コスト削減をお考えの方は、本記事でご紹介した方法や手順を参考に、まずは自社のコストの把握から始めることをおすすめします。
税理士、臨床工学技士、行政書士。大学は臨床工学科へ進学し、臨床工学技士免許を取得。クリニックで透析治療に従事した後、税理士法人に勤務しながら税理士試験を受験し、税理士資格を取得。
現在は医科、歯科、介護、薬局の税務を中心とした税理士事務所を経営。
臼井雄志税理士事務所※ 月の発行件数500件の場合の月間の導入効果(ラクス調べ)
「楽楽明細」の姉妹製品・関連サービスのご紹介です。
バックオフィス業務のあらゆるお悩みを解決できるシステム・サービスをご用意しています。
おかげ様でラクスグループのサービスは、のべ83,000社以上のご契約をいただいています(※2024年3月末現在)。「楽楽明細」は、株式会社ラクスの登録商標です。
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